Erik Satie (エリック・サティ)についてまとめています。
■サティ的コラム ●グノシエンヌ第3番 冒頭部演奏法について ◆始めに グノシエンヌ第3番の最初の一音は、程度の差はあれ、どの演奏家も皆様長めに強調して弾いている印象を受けます。では、他の音と比べて実際にはどの程度長めに演奏されているのか。それを知りたくて簡単な分析を行ってみました。 ◆方法 a)高橋悠治「サティピアノ作品集-3」、チッコリーニ「Satie−L'OEuvre pour piano(旧録音)」、バルビエ「L'OEUVRES POUR PIANO」中のグノシエンヌ3番の全体の長さをそれぞれ計測。 b) 各CDよりグノシエンヌ第3番をパソコンにWMA形式で取り込み。 c) それぞれ16分の1倍速にスピードを落とし、図1のA〜Eまでの音符の長さ及びF〜Gまでの長さをそれぞれ10回ずつストップウォッチで小数点以下2桁まで計測し、平均値を算出。 d)A〜Eのそれぞれの長さを、A〜Eまでに要した時間で割り、各音符の占める長さの割合を求めた。 ◆結果 各CDにおけるグノシエンヌ第3番のトータルの演奏時間を表1に示します。 表1 各CDにおける演奏時間
16分の1倍速にスピードを落とした各データ(以降、「各データ」と表記)の、A〜Eまでのそれぞれ、及びF〜G、A〜Gにかかった時間を表2 に示します。また、各データのA〜Bまでのそれぞれの音符の長さを、A〜Eまでに要した時間で割り、それぞれの割合を求め、表3に示します。 表2 各データのA〜Eのそれぞれの音符の所要時間及びF〜Gの区間の所要時間
表3 各データのA〜Eの音符の所要時間の、A〜E全体に要した時間に占める割合(%)
Aの音符の長さの割合は、24.9%、30.6%、27.7%と、いずれのデータにおいても高い数値が得られました。特にチッコリーニにおいては顕著であり、 A、Cともに楽譜には8分音符で表記されているにも関わらず、Aは、30.6÷16.2=1.89と、Cの2倍近い値が得られています。これは、むしろAを4分音符、Cを8分音符のように表記した方がこの演奏に近くなり、敢えて言葉尻を捉えると「楽譜通り」とはとても言いがたいと言えます。 ◆終わりに 簡単に誇張して言うと「ララレレファファー」と弾くよりは「ラーラレレファファー」と弾く傾向がある、ということですね。その方が「それらしい」演奏に聞こえるのでしょう。普段聴いているときにもそれは感じていましたが、分析してみるとそれがはっきりと数値にあらわれたのがおもしろかったです。 |